港の船長と、食堂の女将
The harbor captain and the diner's landlady
D07-1-P13-captain-and-landlady・遊ぶ人向け・霧走町 流氷に眠る(遊ぶ人向け)

底引き船の船長は、無口で、押されると開き直る。
食堂の女将は、面倒見がよくて、人を庇う。
第一章で、最初に向き合うことになる二人です。
佐伯。
港の船小屋の陰で、網を繕っている船長です。
佐伯「……よそ者が、何の用だ」
最初の一言がこれです。
口数は少なく、返事は短い。
けれど、仕事の話には、ちゃんと答えます。
佐伯「十五から乗っとる。それしか知らんからな」
「節くれだった手が、網の目を数えるように動いている。」
刑事「一つずつ、全部見るんですね」
佐伯「見たつもりで済ません。沖へ出てから穴が分かっても、網は言い訳を聞かんからな」
海のことを聞けば、こうです。
佐伯「……荒れる。夜は出るな」
佐伯「この時期の海を、あんたらは知らん」
佐伯は、12年前の海難の生き残りです。
そして、この事件で最初に疑われる人でもあります。
疑いを向けられたと感じると、構えを固めます。
佐伯「わしを疑うんなら、証拠を持ってこい。それまでは何も言わん」
ハル。
食堂「番屋」の女将です。
「湯気とだしの匂い。カウンターの向こうで、女将が包丁を置いた。」
札幌から来た刑事にも、まず食べさせようとする人です。
ハル「今日は鱈が入ってるよ。汁にすると身が甘くてねえ」
ハル「刑事さんも、食べていきなよ。痩せてるじゃないか」
勘定を聞くと、こう返されます。
ハル「いいよ、今日は。……あんたには、ちゃんと調べてほしいからね」
けれど、あの晩のことを聞くと、ふと言葉が止まることがあります。
ハル「……いや、なんでもない。忘れとくれ」
「ハルは目を逸らした。何かを、飲み込んだ顔だった。」
この人が隠しているのは、罪ではありません。
見てしまったことです。
そして、誰かを庇うために黙っています。
「世話を焼く声と、話を切り上げる声が、同じ調子で出てくる。」
二人とも、悪人として書いてはいません。
それぞれに、話せない理由があります。
その理由に、聞き方しだいで近づいていけます。
『霧走町 流氷に眠る』の第一章はブラウザで無料。
プロフィールのリンクから、港と番屋を訪ねてみてください。