猫の名前を聞いても、女将は答える
Ask the cat's name and the landlady still answers
D11-1-P21-small-talk・遊ぶ人向け・霧走町 流氷に眠る(遊ぶ人向け)
食堂「番屋」の裏口に、茶色い猫が来る。
事件とは何の関係もない、その猫の名前を、女将に聞いてみました。
▶「あの猫の名前は」
ハル「あの子かい。茶太郎って呼んでる。……あたしが勝手にね」
ハル「向かいの家じゃ『とら』、駐在さんは『おい』って呼んでるらしいよ」
ハル「名前が三つもあるんだから、あの子がこの町でいちばん顔が広いのさ」
一匹の猫に、名前が三つ。
女将は茶太郎、向かいの家はとら、駐在はおい。
それだけで、この町の家の近さが分かります。
画像の下の灰色の行は「理解した行動:雑談として受け取った」。
こちらの問いを、事件の話ではなく、ふつうの世間話として受け取った、という印です。
猫のことを続けて聞くと、女将が笑い出します。
ハル「刑事さん、さっきから茶太郎のことばっかり聞くね」
ハル「……あの子、知らない人には寄りつかないんだけど」
「戸の隙間の猫が、刑事の足元までのそのそ歩いてきて、靴の匂いを嗅いでから戻っていった。」
ハル「ほら。あんたも、もうこの店の顔だ」
世間話ができるのは、女将だけではありません。
港の船長に、熊のことを聞くと。
佐伯「熊か。山にはおる。……浜まで下りてくることは、まずない」
佐伯「怖いのは獣より海だ。こっちは待っちゃくれん」
駐在に、落とし物のことを聞くと。
堂本「来ますよ。手袋やら、鍵やら。……この町では、たいてい持ち主が知れます」
堂本「知れんかったものは、署へ回します。年に何度もありませんがね」
どれも、事件の捜査は一歩も進みません。
手帳にも、何も残りません。
それでも入れてあるのは、町の人が、事件のために立っているのではないからです。
女将は店を開け、船長は網を繕い、駐在は落とし物を預かっている。
刑事がそこへ話を聞きに入る。
世間話に答えてくれる人だから、事件の話で口を閉ざしたときに、その重さが伝わる。
そう考えて書いています。
何でも答えるわけではありません。
用意のない話には、女将なら「……さあねえ」と、かわされることもあります。
かわされたら、別のことを聞いてみてください。
聞き込みに疲れたら、番屋の裏口をのぞいてみてください。
茶太郎がいるかもしれません。
『霧走町 流氷に眠る』の第一章はブラウザで無料。
プロフィールのリンクから、茶太郎の名前を聞きに行けます。