kaedeasset記事 · Notes霧走町 流氷に眠る

被害者にも、事件の前の暮らしがあった

The victim had a life before the case, too

 D11-2-P22-victims-daily-life・遊ぶ人向け・霧走町 流氷に眠る(遊ぶ人向け)

推理アドベンチャー自然言語処理遊ぶ人向け

この回の画面

戸倉誠一。
漁協の組合長。
防波堤で倒れているのが見つかり、署は事故と見ている。

「霧走町。漁協組合長・戸倉誠一が防波堤で死んだ。署は事故と見ている。」

刑事が町に着いたとき、この人はもういません。
画面に一度も出てこないし、一言もしゃべりません。
立ち絵のないゲームなので、顔も出ません。

設定の上では、61歳。
けれど、その数字さえ、作中では誰も口にしません。

この人がどんな人だったかは、町の人の口からしか分からない。
それが、『霧走町 流氷に眠る』の被害者です。

駐在の堂本は、こう話し始めます。

堂本「戸倉誠一さん。漁協の組合長です。防波堤で倒れとるのが見つかりました」
堂本「署は酔って足を滑らせた事故だと。……調書はまだ、わたしの手元で止めとります」

食堂の女将のハルは、こうです。

ハル「組合長かい。強引な人だったよ、昔から。……敵も多かったろうね」

同じ人の話なのに、呼び方が違います。
堂本は「戸倉さん」と名前で呼ぶ。
ハルは「組合長」と肩書きで呼ぶ。
町の多くの人にとって、この人は、港の仕事の上にいた人でした。

第一発見者の岬も、名前ではなく肩書きで言います。

岬「夜釣りの帰りでした。防波堤の根元に、人が倒れてて……組合長だと分かって」

夜の防波堤で倒れている人を見て、誰なのかがすぐに分かる。
それくらい、町じゅうに顔を知られていた人です。

番屋の壁にも、この人の仕事の跡があります。

「カウンターが六席。壁には色褪せた漁協の暦と、日に焼けた集合写真が一枚。」

港に船があり、店の壁に漁協の暦がある。
事件がなければ、次の日も、同じように港の仕事をしていたはずの人です。

「強引だった」「敵も多かった」という言葉は、台本にそのまま入っています。
生きていた人には、好かれる面も、嫌われる面もあります。
全員が口をそろえて「いい人だった」と言う町のほうが、かえって嘘くさい。

ただ、書く側が一つだけ決めていることがあります。
町の人の悪口を、地の文が裏づけないことです。
ハルが強引だったと言えば、それはハルの見方として残る。
地の文が「確かに強引な男だった」と後押しすることはありません。

死んだ人は、何を言われても言い返せません。
だから、言った人と、言われた人を、いつも分けておく。
その上で、何人もの言葉を集めていくと、一人の人の輪郭が少しずつ立ち上がってきます。

刑事の仕事は、この人の最後の一日をたどることです。
どこにいて、誰と会い、何を話していたか。
それは捜査の手順ですが、失われた一日を拾い直すことでもあります。

画像は、防波堤で係船柱を調べた画面です。
この人が最後にいた場所です。

第一章は、ブラウザで無料で遊べます。
組合長がどんな人だったかを、プロフィールのリンクから、町の人に聞いてみてください。

#推理アドベンチャー #自然言語処理