分かりやすい悪役は、この町にいない
There is no obvious villain in this town
D13-1-P25-no-obvious-villain・遊ぶ人向け・霧走町 流氷に眠る(遊ぶ人向け)
事件は殺人。
けれど、町の人がそれぞれ隠しているのは、殺人ではない小さな事情です。
『霧走町 流氷に眠る』には、分かりやすい悪役を置いていません。
最初からいかにも怪しい男がいて、その男を追い詰めれば終わる。
そういう話にはしませんでした。
町にいるのは、数人の生活者です。
船長は網を繕い、女将は店を開け、若い漁師は網を干し、宿の主人は帳場に座っている。
その誰もが、少しずつ黙っています。
黙っているのは、悪いことをしたからとは限りません。
誰かをかばうため。
古い話に、触れたくないため。
自分が言えば、ほかの誰かが困るため。
聞き方を変えると、黙り方も変わります。
食堂の女将に、無理には聞かない、と前置きして尋ねたときです。
「ハルは布巾を畳む手を止めた。しばらく、湯気の音だけがしていた。」
ハル「……あんた、そういう聞き方をするんだね」
ハル「悪いね。今は、言えないんだよ。……あたしの口から言うことじゃない」
若い漁師に、同じように柔らかく聞くと。
岬「……」
「岬は足元の網に目を落としたまま、長く黙っていた。」
岬「……ありがとうございます。でも、まだ言えないです」
二人とも、嘘をついて逃げてはいません。
言えない、と言っています。
言えない理由があることまでは、隠していません。
このゲームでは、こういう沈黙を、罪としては書きません。
刑事の仕事は、黙っている人を責めることではなく、黙っている理由に近づくことです。
理由が分かれば、話してくれることもある。
話せないまま、という人もいる。
警察の側にも、悪人は置いていません。
事故で片づけようとしている署も、手が足りないから動けないだけです。
町の駐在は、こう言います。
堂本「ありませんよ、そんなもの。ここは駐在所ですから」
堂本「身柄を押さえることになれば、署から人が来ます。……そうならんのが一番です」
留置場はあるかと聞いたときの答えです。
誰かを捕まえる日が来ないほうがいい、と思っている駐在です。
それでも、一人の人が死んでいます。
小さな事情と、小さなかばい合いが重なった先に、一つの死がある。
誰か一人を悪者にすれば片づく話ではないから、よそ者の刑事が、一つずつほどいていくしかない。
第三章は、自白で終わらせません。
「やりました」の一言で幕を引くのではなく、集めたもので確かめる。
それも、悪役を置かない話にした理由の一つです。
全三章の製品版は、Steam で 2027年 発売予定です。
町の人が黙っている理由を、最後まで確かめたくなったら、プロフィールのリンクから Steam のウィッシュリストへ。