防波堤には、手すりがない
The breakwater has no railing
D18-2-P36-breakwater・遊ぶ人向け・霧走町 流氷に眠る(遊ぶ人向け)

組合長が倒れていた防波堤。
署は、酔って足を滑らせた事故だと見ています。
その見方にも、理由はあります。
防波堤の造りそのものを見てみると、こう書かれます。
▶「防波堤の造りを見る」
「打ち継ぎの目地が浮き、角は波で丸くなっている。手すりの類は無い。」
「幅は三メートルほど。酔った人間なら落ちてもおかしくはない——署がそう見たのも分かる。」
画像は、同じ防波堤で係船柱を調べた画面です。
奥に灯台、右に流氷の海。
画面の下の「人物」の欄は「周囲」になっています。
ここには、話を聞ける相手がいません。
「人の姿はない。」
だから、防波堤では見て、触って、確かめます。
▶「海の水に手を入れてみる」
「指を入れた途端、痛みに近い冷たさが走った。すぐに引き上げる。」
「……落ちれば、何分ももたない。泳ぎの上手下手の話ではない。」
▶「海をのぞき込む」
「岸壁の下をのぞき込む。黒い水と、砕けた氷。目ぼしいものは浮いていない。」
「……何かが沈んだとして、この季節に引き上げる術はない。」
刑事の地の文は、署の見方をすぐには退けません。
手すりのない、幅三メートルの堤。
落ちれば何分ももたない海。
事故だと書いた人の気持ちも、ここに立つと分かる。
そう書いたうえで、それでも何かが引っかかるのかを、自分の目で探していきます。
どれも事件と直接つながる手ではありません。
手帳にも残りません。
けれど、この場所がどんな所かを知ってから現場を調べると、見え方が変わります。
冷たさに耐えかねたら、こうも入力できます。
▶「ひと息つく」
「息を吐くと、白く固まってすぐ消えた。……先を急ごう。」
防波堤に入ったときの地の文は、まず流氷が岸を擦る音のことを書きます。
人の声のない場所で、聞こえるのはそれだけ。
文章を読みながら、その音の中に立っている。
そういう場所として書きました。
『霧走町 流氷に眠る』の第一章はブラウザで無料。
手すりのない堤の上に、プロフィールのリンクから立ってみてください。